事業承継のスタートとして、最初に考えるべきなのは、どのようなことですか?

 

「いつ」、「誰に」、「何を」、「どのように」承継させるのか、また、事業承継を行いやすい形に変えておくことです。

1.「いつ」事業承継を行うのか
 現代表者にとって一番に重要なのは、いつ事業承継を行うのかを決定することです。身体的・能力的・社会的・経営感覚的な限界は、いずれ到来するものであり、その限界が到来してもすぐに後継者へ会社を引き渡せるのではありません。後継者を補助していく期間があれば、事業承継をソフトランディングさせることができるでしょう。その時間の制約を先に把握しておく必要がありますし、ゴールの時期をはっきりさせることにより対策の方法も違ってきます。

2.「誰に」承継させるのか
 誰に承継させるのかというのは、最も悩ましい問題ではないでしょうか?あらゆる企業において望ましい後継者が存在するのではなく、後継者が決定しているのでもないと考えられます。親族に承継させたいという考え方も、親族に承継させる意思はないという考え方も存在します。親族内承継が無理であるということもあります。たとえ親族内承継が無理であるとしても、古くから会社を一緒に経営してきた役員の中に、引き継ぎたい人が存在する可能性もあります。もしそのような人がいないのなら、外部から後継者を募ったり、会社を売却したりすること等も検討する必要があるでしょう。

3.「何を」承継させるのか
 会社経営において、重要な承継資産となるものとして、「自社株」と、会社の事業に使用している「不動産等」があります。自社株は、後継者の経営権を確保するために重要な資産なのですが、順調な経営が続くと、評価額が高くなっていて相続により取得するに当たって納税資金不足に陥る恐れがあります。不動産等も、経営に必要な場合が多いといえますので、相続の際に売却しなければ納税資金を確保できないとなると、以後の会社経営に大きな影響を及ぼしてしまいます。

4.「どのように」事業承継を行うのか
 上記1~3の段階を経ることにより、具体的な方法の選択をする方向性が見えてきたのではないでしょうか?これを踏まえて、どのような事業承継方法が、経営・組織・租税の面でスムーズであるかを検討することが重要です。

5.事業承継を行いやすい形に変えておく
 たとえいつ、誰に、何を承継させるかが決定していないとしても、事業承継を行いやすい形に変えておくことは必要だと考えられます。例えば、複雑な会社組織形態を再編する、少数株主の持株を金庫株で買収して経営の安定化を図る、現代表者と会社との金銭貸借を解消して流動性を持たせるというようなことです。
 事業承継については、会社ごとに望ましい形があるといえます。それを念頭に置くことなく、何とかなるはずだと考えているだけなら、後継者に問題を先送りすることになります。また、大企業であるなら、後継者の問題だけでなく、従業員やその家族の人生にも影響を与える問題ですので、一層、経営者として先んじて考えておかなければならないことなのです。

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