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自社株対策の必要性について教えてください。
未上場会社のオーナーが自社株の評価額を把握していないために、相続に当たって後継者が納税資
金を確保できず、“相続税破綻”といった状況に陥るケースもあります。この場合、相続人だけでなく、会社の従業員にも影響を与えてしまいます。また、自社株移転時の税負担は、少なくありません。
したがって、現在の自社株の評価額を把握し、後継者に自社株をスムーズに移転する方法を検討する必要があります。
1.自社株は現在いくらか
自身の所有する株式が現在、いくらなのかを確認することが重要です。そして、自社株の評価額のみならず、その評価方法についても理解を深めておきましょう。
2.自社株の評価を引き下げるにはどうすればいいか
自社株を評価することにより、会社の状況を認識します。そのことを通じて、株価を引き下げる対策を検討していきます。ただし、会社経営に与える影響の少ない対策を選択しましょう。
3.自社株対策の流れ
(1)自社株の評価
自社株対策として第一に行うのは、自社株を評価することといえます。まず評価のルールに沿って株価の算定を行い、現在の自社株の価値を認識しましょう。
具体的には、自社株にどの評価方法が適用されているのか、評価額が高くなっている原因は何か
等を確認します。類似業種比準価額が高いのであれば、比準要素のうちの何が影響を及ぼしてそうなっているのか、純資産価額が高いのであれば、会社のどの資産に含み益があるのかというようなことを考えていきます。
オーナーの中には、自社株を評価してみると思った以上に株価が高くなっていて、将来の相続税の納税資金を確保するのに困る人も、数多く存在します。自社株の評価額を知り、評価額が高い原因を分析することから始めるべきです。
(2)自社株の評価引き下げ方法の検討
自社株の相続税評価額は、次の計算式により算出されます。
1株当たりの評価額×所有株式数
評価額を下げる方法には、次の二つがあります。
・「1株当たりの評価額」を下げる。
・「所有株式数」を減らす。
そのうちの1株当たりの評価額を下げる方法には、次の二つがあります。
・評価方式を変更する。
・株価自体を引き下げる。
ア.評価方式を変更する
上記(1)で評価のルールに沿って算定した株価は、原則的評価方式が適用される場合には、会社
規模による会社区分(大会社、中会社、小会社)に応じて、類似業種比準価額方式・純資産価額方
式・類似業種比準価額方式と純資産価額方式の折衷方式のいずれかにより評価されています。
含み益がある資産を多く所有する会社は、純資産価額方式による評価額が類似業種比準価額方
式による評価額より高くなるのが一般的です。したがって、類似業種比準方式を用いて評価する
比率が高い会社区分に変更すれば、株価の評価を下げられます。大会社は類似業種比準価額方式
により評価し、中会社は類似業種比準価額方式と純資産価額方式の折衷方式により評価しますので、会社規模を大きくし、小会社から中会社、中会社から大会社へと会社区分の変更を行うことで、株式の評価を下げることが可能です。
イ.株価自体を引き下げる
株価自体を引き下げるときには、評価額が高くなっている原因を分析する必要があります。
類似業種比準価額が高いのであれば、その算定の根拠となる「1株当たりの年配当額」・「1株当たりの年利益額」・「1株当たりの純資産額」の引き下げのほか、類似業種の変更も視野に入れて検討を行います。
一方、純資産価額が高いのであれば、役員退職金を支払うことや含み損のある資産を売却すること等によって会社の純資産価額を下げること等を検討します。
(3)所有株の移転方法の検討
上記(2)のように、「1株当たりの評価額」を下げることを考えるほか、「所有株式数」を減らす
こと、すなわち、所有株式をどのように移転していくかということを検討することも、自社株の
相続税評価額を下げるには重要です。誰に、どのように移転するかを考える必要があります。移
転先が個人なのか・法人なのか、移転方法が贈与なのか・譲渡なのか等の組み合わせによって、
税務上の課税関係が違いますので留意しましょう。
移転先と移転方法の組み合わせは、一般的に次のようなものが挙げられます。
ア.移転先が個人
・後継者への贈与
・後継者への譲渡
・役員・従業員に対する譲渡等
・取引先等の個人に対する譲渡等
イ.移転先が法人
・資産管理会社(持株会社)への株式移転・交換
・公益法人への寄附
・第三者の法人への譲渡等
(4)自社株対策の実行
上記(1)~(3)の準備が済んだ後は、自社株対策を実行することになります。実行時には、租税回避行為として税務上否認されることのないよう、慎重に行う必要があります。
オーナーへの退職金の支払いで、どのような効果が期待できますか?
オーナーの役員退任時に退職金を支払うことにより、自社株の評価が下がる効果が期待できます。
そして、オーナーは、少ない税負担で現金を得られます。
1.退職金支給による自社株の評価減
オーナーに退職金を支払えば、会社財産が減ることと、退職金を支給した事業年度の利益が減少す
ることによって、自社株の評価が下がります。オーナーの役員在任期間が長い場合には、支給する退
職金が多額となり、自社株の評価額に大きな影響を及ぼすことが多いといえます。
自社株の評価が下がった時期に、相続時精算課税制度を選択して後継者に自社株を贈与することに
より、少ない税負担で後継者に株式を移転することが可能となります。
2.退職金に対するオーナーの税負担
退職金は、長年の労働の対価です。そして、老後の生活資金となる大切なものです。それゆえ、税金面で特別な優遇規定が定められていて、税負担は少なく、手取り額は大きくなります。
退職金を一時金で受け取る場合には、所得税・住民税共に、税金は次のように算出します。
(退職金-退職所得控除)×1/2=退職所得
退職所得×税率=税額
3.退職金をいくら支給するか
法人税で損金にできる退職金は、役員が業務に従事した期間・退職の事情・自社と類似規模で同種
事業を営む会社の役員に対する退職金の支給の状況等を考慮して、決定することになっています。
退職金の支給額の算定方式については、代表的なものとして、功績倍率方式があります。この方式
によると、退職金は次のように計算されます。
退職金=最終月額報酬×役員の在籍年数×功績倍率(2~3倍)
なお、退職金の支給については、退職金の金額・時期・方法等の支給に関する一定の基準を内規と
して定めておくことが重要です。